秘密保持契約(NDA)がある副業で、「文章の下書きや要約にChatGPTを使いたい」と考えることは珍しくありません。しかし、NDA案件では「ChatGPTが安全かどうか」だけで利用可否を決めるのは危険です。
結論からいうと、NDA案件でChatGPTを使えるかは、NDA・業務委託契約・発注者のAI利用ルール・入力する情報・利用するChatGPTの環境を確認して判断する必要があります。
ChatGPT側で学習利用をオフにしていても、それだけで発注者から預かった秘密情報を入力してよいことにはなりません。まず「その情報を外部の生成AIへ送信してよいのか」という契約上・業務上の許可を確認することが重要です。
先に結論
- NDAを結んでいるだけでChatGPTが一律禁止になるわけではない
- 反対に、学習オフだから自由に入力できるわけでもない
- 契約書と発注者の生成AI利用ルールを最優先で確認する
- 許可が不明なら秘密情報そのものは入力しない
- 必要なら発注者に「生成AIをどこまで使ってよいか」を確認する
秘密保持契約がある副業でChatGPTは使える?
NDA案件でChatGPTを使えるかどうかは、NDAという名称だけでは判断できません。
秘密保持契約には、秘密情報の定義、利用目的、第三者への開示、情報管理方法などが定められていることがあります。さらに、業務委託契約や発注者独自のセキュリティ規程で、外部サービスや生成AIの利用を制限している場合もあります。
重要なのは「AIを使うこと」よりも、「どの情報を、どのサービスへ、どのような条件で入力するか」です。
たとえば、一般公開されている情報だけを使って文章構成を考えてもらう場合と、クライアントから受け取った未公開資料をそのまま貼り付けて要約してもらう場合では、秘密保持の観点から意味が大きく異なります。
NDAがあるから即NGとは限らない
NDAにはさまざまな内容があります。生成AIの利用そのものを禁止している契約もあれば、外部サービスへの情報送信を制限している契約、秘密情報を適切に管理することだけを求めている契約もあります。
そのため、「NDA案件=ChatGPT禁止」と機械的に判断するのではなく、実際の契約内容を確認することが第一歩です。
ただし、契約に「ChatGPT」「生成AI」という言葉が書かれていないから利用可能とも限りません。「第三者への開示」「外部サービスへの提供」「目的外利用」「再委託」などの条項が関係する可能性もあるためです。
学習されない設定でも契約上の許可とは別問題
ChatGPTには、会話をモデル改善へ利用するかどうかを管理する設定があります。個人向けChatGPTでは「すべての人のためにモデルを改善する」をオフにすると、新しい会話はモデル改善に使用されません。
また、Temporary Chatは履歴に残らず、モデル改善にも利用されませんが、安全上の目的で一定期間保持される場合があります。
ChatGPT Business、Enterprise、EduやAPIでは、組織の入力・出力は原則としてモデル学習に使用されない仕組みになっています。
ただし「学習に使われない」と「NDA上、入力してよい」は同じ意味ではありません。発注者との契約や利用ルールで外部AIへの入力自体が認められていなければ、ChatGPT側の設定だけで問題が解消するわけではありません。
NDA案件でChatGPTへ入力する前に確認したい5つのこと
秘密保持が必要な副業でChatGPTを使う場合は、プロンプトを入力する前に確認する順番を決めておくと判断しやすくなります。
| 確認項目 | 見るポイント |
|---|---|
| 秘密保持契約 | 秘密情報の範囲、外部開示、利用目的の制限 |
| 業務委託契約 | 外部サービス、再委託、セキュリティに関する条件 |
| 発注者のルール | 生成AIの利用可否、指定ツール、入力禁止情報 |
| 入力する内容 | 未公開情報、個人情報、顧客情報などが含まれないか |
| ChatGPTの利用環境 | 個人アカウントか管理された業務環境か、データ設定はどうなっているか |
確認①:NDAで秘密情報がどう定義されているか
最初に確認したいのは、何が「秘密情報」として扱われる契約なのかです。
案件によっては、資料に「機密」「Confidential」と記載されたものだけでなく、業務中に知った顧客情報、売上、企画、仕様、ノウハウ、未公開原稿なども秘密情報に含まれる場合があります。
自分では重要ではないと思った情報でも、契約上は秘密情報に該当する可能性があります。
「少しくらいなら大丈夫」と自己判断せず、入力しようとしている情報が契約上どのように扱われるのかを先に確認しましょう。
確認②:外部サービスや生成AIの利用が認められているか
NDAだけでなく、業務委託契約、作業マニュアル、情報セキュリティ規程、発注時のメッセージなども確認します。
企業によっては、生成AIを全面禁止している場合もあれば、「会社指定のAIのみ利用可能」「個人契約のAIは禁止」「公開情報だけなら利用可能」など、細かなルールを設けている場合もあります。
経済産業省も、生成AIなどを業務で利用する際には、情報管理状況を踏まえて利用可否を判断し、許可された生成AIと許可された情報だけを使うといったルール整備の重要性を示しています。
特に確認したい表現
- 生成AI・AIサービスの利用
- クラウドサービスの利用
- 外部サービスへの情報送信
- 第三者への開示
- 再委託
- 情報セキュリティ
- 目的外利用
確認③:入力内容に秘密情報や個人情報が含まれていないか
ChatGPTへ送る文章の中に、クライアント名、担当者名、顧客情報、メール本文、未公開商品の情報、社内資料、アクセス情報などが含まれていないか確認します。
特に注意したいのが、「文章全体を貼り付けないとAIに相談できない」と考えてしまうケースです。
実際には、秘密部分を渡さなくても「BtoB向けサービスのお詫びメールを丁寧に直してください」「300文字程度の提案文の構成案を作ってください」のように、案件固有の情報を外して相談できるケースもあります。
個人情報を扱う案件ではさらに慎重な判断が必要です。個人情報保護委員会も、生成AIへ個人情報を入力する場合には、利用目的の範囲やサービス提供者による情報の取扱いを十分確認するよう注意を促しています。
確認④:ChatGPTのデータ利用設定を確認する
契約上ChatGPTの利用が認められている場合でも、利用するアカウントのデータ設定は確認しておきたいポイントです。
個人向けChatGPTでは、設定の「データコントロール」からモデル改善への利用をオフにできます。Temporary Chatを利用すれば、通常の履歴には残らず、モデル改善にも利用されません。
一方、ChatGPT BusinessやEnterpriseなどの業務向け環境では、組織の入力・出力をモデル学習に利用しないことが標準の扱いとなっています。
ここで確認するのは「ChatGPT側でどう扱われるか」です。発注者が情報入力を許可しているかという契約上の確認とは分けて考えましょう。
確認⑤:判断できない場合は発注者に確認する
契約書を読んでも生成AIの扱いが分からない場合は、自分だけで解釈して入力するより、発注者へ確認した方が安全です。
確認するときは「ChatGPTを使っていいですか?」だけではなく、利用範囲まで具体化すると認識違いを防ぎやすくなります。
確認内容の例
- 生成AIを文章作成の補助に利用してよいか
- 案件情報を一切入力しない使い方なら問題ないか
- 匿名化した情報なら入力可能か
- 指定されているAIサービスやアカウントがあるか
- AIを利用した場合に報告が必要か
後から「その情報をAIに入力してはいけなかった」と判明するより、作業開始前に利用範囲を決めておく方がトラブルを避けやすくなります。
NDA案件ではChatGPTに何を入力しない方がいい?
発注者から明確な許可がない状態では、秘密情報そのものをChatGPTへ入力することは避けるのが無難です。
特に、以下のような情報は慎重に扱う必要があります。
- 公開前の商品・サービス情報
- 顧客リストや取引先情報
- 氏名、住所、メールアドレスなどの個人情報
- 社内の売上、原価、営業資料、会議資料
- 未公開の原稿、企画書、設計書、ソースコード
- ID、パスワード、APIキーなどの認証情報
- 発注者から「社外秘」「機密」と指定された情報
経済産業省も、生成AIへの不用意な情報入力による意図しない情報漏えいに注意し、社外に流出すると困る情報を入力しないといった対応の重要性を示しています。
匿名化すれば必ず入力できるわけではない
会社名を「A社」、担当者名を「Bさん」に変えれば安全と考えがちですが、匿名化だけで必ず問題がなくなるわけではありません。
案件内容、地域、商品名、数値、時期などの組み合わせから取引先や案件を推測できる場合があります。また、秘密情報の定義によっては、名称を消しても情報そのものが秘密情報であるケースがあります。
匿名化は「契約上入力してよいか」の確認を不要にする方法ではありません。
秘密情報を入力せずChatGPTを副業に活用する方法
NDA案件だからといって、ChatGPTをまったく活用できないとは限りません。秘密情報を渡さず、一般的な作業補助に限定する方法があります。
文章の型や構成だけ作ってもらう
クライアント固有の情報を入力せず、「法人向け提案メールの構成」「FAQ記事の見出し案」「読みやすい報告書の構成」といった汎用的な相談をする方法です。
ChatGPTには構成や表現だけ考えてもらい、案件固有の内容は自分の作業環境で後から追加します。
ダミー情報に置き換えて相談する
具体的な数値や名称が必要ない作業なら、実データではなく架空のサンプルを使って相談する方法もあります。
たとえば実際の売上データを貼り付ける代わりに、架空の数値を使って「この形式のデータを説明する文章の型を作ってください」と依頼し、その型だけを参考にします。
公開情報だけを材料にする
企業の公式サイトなど、すでに一般公開されている情報だけを材料にする方法もあります。
ただし、「公開情報だから案件内で自由に利用してよい」とは限らないため、業務のルールそのものは別途確認が必要です。
AI副業のNDA案件で迷ったときの判断手順
ChatGPTへ入力する直前に、次の順番で確認すると判断を整理しやすくなります。
- NDAと業務委託契約を確認する
- 発注者の生成AI・セキュリティルールを確認する
- 入力予定の情報が秘密情報や個人情報に当たらないか確認する
- 利用するChatGPTのアカウントとデータ設定を確認する
- 少しでも不明なら秘密情報を入力せず発注者へ確認する
判断基準は「ChatGPTに入力しても技術的に大丈夫そうか」ではなく、「この案件で、その情報を、その環境へ入力することが認められているか」です。
AI副業の秘密保持とChatGPTでよくある質問
Q1. NDAを結んでいたらChatGPTは使えませんか?
一律に使えないとは限りません。NDA、業務委託契約、発注者の生成AI利用ルールを確認し、許可されている範囲で利用する必要があります。
Q2. ChatGPTの学習をオフにすればNDA案件でも入力できますか?
学習をオフにしただけでは判断できません。モデル改善に利用されない設定と、発注者から秘密情報の入力を許可されていることは別の問題です。
Q3. Temporary Chatなら秘密情報を入力しても大丈夫ですか?
Temporary Chatはモデル改善に利用されず通常の履歴にも残りませんが、それだけで秘密情報を入力する許可が生まれるわけではありません。契約と発注者のルールを先に確認します。
Q4. 会社名を伏せればChatGPTに相談できますか?
名称を伏せただけで安全とは限りません。他の情報から案件を特定できる場合や、情報自体が秘密情報に該当する場合があります。匿名化だけを利用可否の根拠にしない方がよいでしょう。
Q5. ChatGPT BusinessならNDA案件でも自由に使えますか?
ChatGPT Businessではワークスペースのデータがモデル学習に使われないことが標準ですが、発注者との契約や社内ルールまで自動的に変更されるわけではありません。業務で利用してよい環境として承認されているか確認が必要です。
Q6. NDAに生成AIについて書かれていなければ使っても大丈夫ですか?
生成AIという言葉がなくても、秘密情報の外部開示、外部サービス利用、再委託、目的外利用などの条項が関係する場合があります。記載がないことだけを理由に利用可能とは判断しない方が安全です。
秘密保持契約がある副業ではChatGPTへの入力前確認を優先しよう
NDA案件でChatGPTを使えるかどうかは、「NDAがあるか」「学習がオンかオフか」だけでは決まりません。
契約内容、発注者の生成AIルール、入力する情報の機密性、利用するChatGPT環境をセットで確認することが重要です。特に発注者から渡された未公開情報や顧客情報を、許可が分からないまま入力するのは避けましょう。
ChatGPTを活用したい場合は、まず秘密情報を含まない構成作成や一般的な文章改善などから切り分けます。案件情報の入力が必要になる場合は、事前に発注者へ利用範囲を確認してから進めると、NDAとAI活用を両立しやすくなります。




